「あなたのかかりをしようよ! 自分と周りを幸せに出来るよ」 |
奈津子さんは、お母さんがイギリスの方、お父さんが日本の方。
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目鼻立ちの整った瞳のくりくりした可愛らしい女の子でした。
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家庭訪問では、娘が通訳するくらい、お家では英語を喋っています。
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みんなが声をかけると、ちょっとだけはにかんで、すぐさま本に目を落とします。
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放課後もみんなが遊んでいるところから少し離れたところで
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ときどきこちらを見てはなんだかうらやましそうな顔をしていました。
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授業中にかかわらず大泣きして、担当の音楽の先生いわく、
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ぼくはクラスを自習にして面談室で彼女と話しました。
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事情を聞くと、ハーフである自分が嫌いだ、ということらしいのです。
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「ハーフであることを変えることは出来ないんだよね、一生」
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そういった発言を周りがしないように注意することは出来るのですが、
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それ以上に本人が奈津子としての人生を生きていく覚悟を持つ必要があるのです。
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「君は、イギリスと日本、二つのなかなか理解し合えないものを
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二つの異なる文化の中に育てられた君じゃなければ絶対に見えない感覚なんだよね」
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手を被ってしゃくりあげていてた彼女がぴくっ、って反応しました。
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彼女の作品は、彼女にしか見えない独特の色や光を感じるんです。
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それは二つの異なる国を言ったり来たりしていることによってでしか
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あなたを否定した子を叱っておくけれど(そんなことしなくていい、と奈津子は言った)
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自分の素晴らしいところがいっぱいあるんだよ、といったときでした。
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両親の異なる価値観に翻弄されたり本当の自分と親が期待する自分との間で
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奈津子がどんな理由で悲しんでいるのか説明しました。
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その中で、一番伝えたいことは、彼女が皆と「違う」と思い込んでいる点でした。
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その言葉に反応するように女の子が何人か立ち上がりました。
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やがて女の子全員で奈津子の所に行く、という話になりました。
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ぼくらが、まったりと過ごしていると、女の子達が嬉しそうに戻ってきました。
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女の子達の中にあふれる自信のようなものを認めた瞬間、
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特に奈津子は係の時間ではじめた『本係』で楽しそうに活動しました。
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画用紙を重ねて作った小さな絵本を教室の後ろに置いたところみんなが
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彼女はクラスに溶け込み、休み時間も忙しそうでした。
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放課後も何人かと時間を過ごし、子どもらしい仕草をぼくに見せてくれました。
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やがてクラスの終わりが近づいたあるとき、あの日のことを話してもらいました。
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居合わせた女子全員が、奈津子の好きなところを伝えたそうです。
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そして同時に自分自身の嫌いなところを伝え合ったそうです。
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人は周りの人が「素敵」だと思っている所を嫌っていること。
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どんな人も、自分の事を受け入れられず苦しんでいる、ということ。
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そして二つの異なる文化をつなぐ架け橋になることを使命に
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その言葉をもらえてぼくが嬉しくなり自信となったことは言うまでもありません。
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たった1つの言葉が、誰かの胸に届き、いつまでも残っている、
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