「あなたのかかりをしようよ! 自分と周りを幸せに出来るよ」 |
あるとき、ぼくは水泳指導回数券というのを購入して、
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そう言われて、最初は誰なのか分からなかったのですが、
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ぼくと目があったとたん、右手を後頭部に当てたときに
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念願だったジュニアオリンピックにも出場していたそうです。
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列になり、谷ちゃんの提案するメニューを次々こなします。
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手を取ったり足を取ったりしてその方をサポートします。
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列を見渡すと、ぼくより年配の、そして常連らしい方ばかり。
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説明の度にそんな常連の方にいじられて右手を後頭部にあてて笑っています。
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「あ、こちらの方、ぼくの小学校時代のせんせいです」
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突然ぼくをみんなの前で紹介しました。一斉にコチラを向いたので
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「とにかく面倒見が良いのよ。わたしたち年寄りは別に速くなんて泳がなくって良いの。
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その評価になんだかぼくまでが褒められたような気分になりました。
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そしてバタフライの実技に入ると、一人一人の腰を持って、
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より深いところまで体を入れる感覚をサポーとしてくれました。
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「バタフライって深く体を水に入れるんです。それによってあがっていくんです」
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で、とにかく、何か言うときに必ず「先生」っていう主語を入れるんです。
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と思いながら、教え子に教えてもらえる幸福感を味わっていました。
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かつて同じように彼に泳いでもらったことを思い出しました。
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そして何より彼らしさを感じたのは、年配の生徒さんからいじられることです。
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それはあの小学校4年生の時と何一つ変わっていませんでした。
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もっというと「未成熟な自分」と思い込んでいる人はたくさん多く、
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そんなことありません。あのときのままがとっても素敵なのです。
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けっきょくは自分を否定し、正しい自分を作り上げようとします。
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スクールが終わって、フリースイムになると、谷ちゃんが話しかけてきました。
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「せんせいにほめられたくって自学を一生懸命やりました」
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谷ちゃんを担任した年からはじめた自学はまだジャッヂしていました。
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むしろそれがあるからこそ自分らしく表現できなかった、ということも後に知りました。
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「でも、認めていたよ。谷ちゃんがいじられてはにかむだけで
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クラスが和やかになったということは。谷ちゃんはすごいっていうことを」
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でも、当時、そのことを伝えられなかった気がします。
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https://yokayoka-gakuin.com/events/2211banana7
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