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「あなたのかかりをしようよ! 自分と周りを幸せに出来るよ」 |
チャイムのメロディーにのせて、だれかのかえ歌が聞こえた。
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「♪ めんどいテスト、めんどい漢字。漢字なんていらねぇ、消えろ、この世から ♪」
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みんなはその歌を面白がるわけでも、注意するわけでもなくたんたんと席についた。
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ぼくが国語の教科書を机の上にならべおえると、ばなな先生が入ってきた。
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「なぁ、みんな。今度の漢字テスト、クラスの全員で100点とってみたくないかい?」
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先生は一人ひとりの顔色をたしかめるように何回かいった。
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ぼくら4年2組のたんにん。若くって、元気。ぼくらといっつも遊んでくれるおもしろい先生。
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「全員で100点! そんなのムリさ。オレがいるんだぜ」
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勉強が大っきらいでケンカっぱやい黒田君が声をあげる。
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10問のミニテストだってかんたんに100点がとれないのに……。
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50問の漢字テストで100点をとったことが一度もない。
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「まぁ、やってみないとわからないよ。まずは『やる』って決めるところからだ」
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ばなな先生になって「四つのルール」というのができた。
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二、やると決めた子は、自分で決める。人のせいにしない。
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三、やる、と決めたら最後までやるか、途中でやめるときはやめます、という。
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テストということもあって不安なのか、手をあげた子もまわりを見ていた。
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みんなの気持ちを一つにして当日をむかえよう、とみんなの提案で実行委員がつくられた。
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テストというのは名前が悪いと、「漢字祭り」にしよう、とも決まった。
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委員長はとってもまじめな沢井さんがりっこうほした。
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すると、先生がテストの問題と答えをわたしはじめた。
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「普通にやるんじゃなく、ちょっと変わったことをしよう」
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「いつものテストと違って、テストが終わったら先生の机まで来てください。その場で丸をつけます。
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100点をとった子だけ、まだテストの終わってない子に一画、赤えんぴつでヒントをかきくわえられます。」
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「これなら漢字の苦手な子も助けてもらえるでしょ? クラスが28人いるから、みんなが協力すれば27画も書いてもらえます。
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そう。得意な子も苦手な子もみんなで100点めざすんです。」
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「……、なんかソンしている感じ」うしろの方でだれかがつぶやいた。
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「ソンしてるっていう気持ち、わかるよ」ばなな先生が笑った。
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「テストは自分のためって思っているからね。でも、それをみんなのためにもやってみるんだ。おもしろいよ、きっと」
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ぼくは勉強がきらいだった。とくに漢字はだいきらいだ。
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でも、クラスみんなのためなら書けるような気がした。
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この日から、テストの日まで、漢字の練習をすることになった。
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いつもなら宿題は「ドリル18番」なんてかいてあるのに、今は
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先生は、練習が足りないって言わない。ノートに〇がついて、このちょうし、なんて一言書きそえてもどってきた。
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やっぱりというか、黒田君だけノートを出していない。
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「あっ、先生、広告のうらに練習したんです。えっ、その紙を見せろ、って? すてちゃいましたよ。」
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クラスの中には、広告のうらに書いた、という子もいれば、嘘だよっていう子もいる。
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一方、沢井さんは毎日二時間いじょう練習をしているらしい。
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お風呂から出ても心配で漢字練習をしているらしく、手のこうが鉛筆の粉でまっ黒になっていた。
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「うぜぇんだよ、実行委員だからってちょうしにのるなよ」
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そして一番先に漢字テストをおえ、100点をとるんだろうなって思った。
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沢井さんに助けてもらえるという安心感はあったが、それいがいのところをまちがったら大変だとぼくはいつもより練習した。
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