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「あなたのかかりをしようよ! 自分と周りを幸せに出来るよ」 |
「祭り実行委員です。みんな、明日テストだよ。練習のせいかをだそうね。」
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黒田君は、みんながきんちょうしているのに、早く帰りてぇ、ゲームしてぇって言ってる。
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「黒田君」帰りぎわにぼくは勇気を出して声をかけた。
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「オマエもそんなくだらないこと言うの? みんなが手伝ってくれるんだろう? 50問テストで27問も教えてくれるんだろ
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びっくりした。ルールをかんちがいしているようだった。
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しずかな教室に、鉛筆のカリカリっていう音がひびいた。
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前にすたすたと出て行って先生に丸をつけてもらっている。
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「はーい」 ふりかえった林さんは、ちっとも喜んでいなかった。
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みんなが林さんを見て、口パクで「おしえてくれ」って言っている。
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パクパクとみんなが口を動かしてテストを出しているすがたは公園の池のコイみたいだ。
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「テストは自分でやるんでしょ」って小さい声でいった。
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ぶすっとしたまま、それでも何人かの机をまわって一画ずつヒントを出した。
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でも漢字の苦手な矢野さんという女の子のところはスルーした。
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そういえば、前にこんなことをいってたのを思いだした。
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「あの子、もっと練習した方がいい。漢字なんて練習すればだれでもできるのにさ。悪いけど、矢野さんつて、なまけものなんだよね」
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ハイタッチしたり、他の子のところにいちもくさんにかけつけて、ヒントをだしたり、黒板にあと何人でクリア、って書いたり
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そうか。同じ目的にチャレンジしているからなんだね。
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「なんだよ、黒田、ほとんど書いてねぇじゃないか、練習してねぇんじゃないか?」
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助けに来た友達からそう言われると、きっ、と相手をにらみつけた。
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「ざけんな。練習、やってんだよ。そんなこというなら、ここから消えろ」
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みんなが手を止めて先生の机を見た。だれもが100点だとうたがわなかった。
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とつじょ先生のペンがとまった。先生がものすごく悲しそうな顔をした。
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「沢井さん、一画書き忘れただけみたい。先生もおまけしてあげたらいいのに」
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ふりかえって沢井さんをみると、泣きながら、間違った字を何回も何回もノートに書いているのが見えた。
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「おいっ、わからないところあるか? 助けに来たぜ」
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ぼくは、もやもやした気持ちで、沢井さんが間違った字を指さした」
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「がんばれよ」赤鉛筆で書かれた字を見ると、さっきまで思い出せなかった字がきゅうに思い出せた。
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ぼくは救援にきた子のチカラを借りて100点をとった。
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「ルールだからな。100点にならなかったんで終わりだ」
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テストで100点をとれなかったのは黒田君、漢字の苦手な矢野さん、
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「み、みんなに話したいことがあるんです。」ゆっくりと前に出てきた。
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「みんな、今回は、わたしのせいで、本当に、本当にごめんなさい。」
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みんな苦しそうな顔をしていた。ぼくも沢井さんの方を見ることができなかった。
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「わたしもごめんなさい」やがて矢野さんまで前に出てきてあやまった。
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「矢野は漢字が苦手だから気にすんなよ」だれかがかばう。すると、教室はますます息苦しくなった。
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「くそっ、……、やるって決めたのは俺でした。やめるっていいませんでした。なのに、練習一分もしませんでした。ご、ごめんよ。」
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だれかが「先生、もう一回やりたい。いいでしょ」って言いだした。
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いっしゅんにして教室中が息をふきかえしたようになった。
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「やらせてください」「お願いします」って声があちこちからした。
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「もちろんだよ」先生は笑った。「1回で全員が100点、っていうルールじゃないしね」
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宿題の練習では、だれもがびっしりと漢字を書いてきた。
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先生からテストの紙をもらって、毎日10個ずつミニテストをしていた。
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「よしよし」沢井さんが頭をなでると、黒田君はうれしそうだった。
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「そういゃ、おれ。漢字ってちゃんと書いたことなかったな。 漢字って、人のために書くんだな」
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矢野さんは漢字を書いても書いてもすぐに忘れてしまうセイシツなんだとテストの後に聞いた。
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前だって、ものすごい量の漢字を練習していたらしい。
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みんなでテストをする、ってことをしなかったら知らないままだった。
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「あ、あのさ。い、今までごめんね。よかったら漢字おしえさせてくれないかな」
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じつは、林さんは、あれから先生に呼ばれていたらしい。
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「林さんは、だれとだれのところに行って一画かいてあげたのかな?」
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先生の目がぎょりと動いた。林さんは答えられなかった。
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じつは、数人に書いてから林さんはすみっこで本を読んでいたのだ。
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「もし林さんがよかったら、そのすごいチカラを必要としている人のためにつかってあげてください」
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林さんが部首だけ、つくりだけを伝えてくみあわせるように言った。
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チャイムがなった。林さんがふいに矢野さんにこういった。
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黒田君が変なことを言ってもクラスはぎすぎすしなかった。
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林さんと矢野さんの間に何があったのかなんとなくみんながわかっているからだ。
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